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第52話 *

 陽斗はただならぬ予感を覚えて指先を強張らせた。自分の中の小心な部分が顔をのぞかせて、恐怖にブルリとわななく。 「嫌ならやめておくかい? 僕は強要しないよ」 「やめたら、どうなるんですか」 「契約はなしだ」 「じゃあ、光斗のことも」 「そうだね」  陽斗は診察台を見ながら、なけなしの勇気を振り絞った。ここまできて怖いから引き返すというわけにはいかない。両手を握りしめ、腹から声を絞り出した。 「……わかりました」 「いい子だ」  陽斗は高梨の横で、服を脱いだ。震える手でベルトに手をかけ、男の視線を感じながらデニムパンツとその下のボクサーパンツを取り去る。くるぶしまでの長さのソックスも脱ぐ。そしておずおずと診療台に近よった。 「そこに座って。それから足おきに、膝をのせて」  言われるがままに足をひらいて座り、両側の長細い台に腿をのせる。すると高梨が足の間にやってきた。 「いい眺めだね」  口角を片側だけ持ちあげて笑う。陽斗は羞恥に唇をかみしめた。  俯く陽斗の前で、高梨が背広の上着を脱いで、シャツの腕をまくりあげる。それから部屋の隅にあったスツールを持ってきて、陽斗の足の間に座った。足おきにのせられた足を、ベルトで固定していく。 「なんで縛るんですか……」 「感じすぎて暴れちゃうから」 「……」  縛られる腿が震える。けれど高梨は、まるで作業のように淡々と手を動かした。両足が結束されると、今度は椅子の下部にあるレバーを回して足おきの角度を変えていった。  (もも)が徐々に持ちあがり、足の間が彼に丸見えの状態になる。高梨には前に一度、股間を見られてはいるがさすがにこれは恥ずかしすぎる体勢だ。

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