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第55話 *
「力を抜いて。始めるよ」
ギュッと目をとじると、かたわらで金属の棒を扱うカチャカチャという音が聞こえてくる。
「目はとじないで、見ててくれると嬉しいな」
「……そんな、怖いよ」
「君の反応を知りたい。さあ、僕に感じる顔を見せて」
陽斗は渋々、目をあけて自分の下肢に視線を落とした。そこでは高梨が陽斗の柔らかなペニスを手に持ち、先端を消毒液を染みこませた綿で拭いている。
「ん……ッ……」
感じやすい場所を優しくこすられて、か弱い声が出そうになった。それをこらえて、疑問に思ったことをきいてみる。
「高梨さん、こういうことするの、経験あるの……」
「昨日、プロのところにいって一晩しっかりレクチャーを受けてきた。腕前はプロが保証したから大丈夫だよ」
高梨が顔をあげて微笑む。優秀なレア・アルファの余裕たっぷりの笑みに、けれど不安が減るわけではない。
「君も心配かもしれないから、手順を話しながら処置していくよ。まず、潤滑ゼリーを、尿道口付近に塗布する」
小さなアルミパウチを破り、上向けた陽斗の亀頭にたらしていく。ヒヤリと濡れた感触に囊 がキュッと縮んだ。
「怖がらないで、リラックスしてて」
「……ん」
難しい注文に、うるみ始めた瞳で頷く。恐怖をおさえた陽斗の表情に、高梨は口の端をあげて満足そうにした。
そうして鞄からシリコーン製の細長い棒のようなものを手に取る。棒は二十センチほどの長さで、持ち手部分がついていた。直径は三ミリほど。その細い部分に丁寧にゼリーを塗っていく。
これが性器に通されるのかと想像すると、怖さと同時に、不可解な昂揚も生じてくる。
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