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第62話 初めての家庭料理
◇◇◇
その後、高梨は宣言どおり陽斗を三度達かせてから解放した。足の拘束を解いて椅子からおろされたときはもう、くったりとなっていて、高梨に抱きかかえられてベッドへと運ばれた。
「本当に、どうしてやろうかって困るぐらい君は可愛いな」
ほとんど意識を失いかけている耳に届いたのは、そんな悔しそうな声音だった。
「……高梨さん」
「うん?」
「俺……フェロモン出てた?」
発情はしなかった。それはわかっている。
「出てなかったね」
高梨は労りに満ちた声で言った。
「ごめん」
「謝る必要なんてないよ」
消沈する陽斗をベッドに横たえて、上がけをかける。
「さあ、今夜はもう休んで。君はよく頑張った」
疲れ果てていた陽斗は、小さく頷くとすぐに眠りに落ちてしまった。
翌朝目覚めたとき、まだ日が昇らない部屋の中で、高梨はベッドの枕元に腰かけていた。
ほの青く暗い視界の中、新しい背広に着替えた彼が、陽斗の髪を優しくかきあげている。
「おはよう」
「……」
挨拶しようとしたけれど、声が掠れて出てこない。瞬きだけ何度かすると、高梨はふっと微笑んだ。
「まだ早いから、眠ってていいよ。僕はこれから仕事にいくけど、後で鷺沼がきて朝食を作ってくれるだろう。今日一日はゆっくり休んでね」
ちゅ、と音を立てて額にキスを落とす。
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