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第63話
「今夜も頑張らなきゃだから」
ものすごく楽しみな顔で爽やかに微笑み、高梨は立ちあがって部屋から去っていった。
残された陽斗は、しばらくぼんやりした後ベッドから起きあがった。早起きの癖がついていたし、体力はもう戻っていたからだ。
シャワーを借りてさっぱりしたところで、持ってきた服に着替えてスマホを確認する。
光斗から家のことでいくつかメッセージがきていたのでそれに答えた。向こうは何とか変わりなくやっているらしい。大学へはボディガードが送り迎えをして、家のことは家政婦がしてくれていると報告がある。割と快適な生活らしく、内容も明るかった。
「……よかった」
これでストーカーも光斗に近よれなくなるだろう。
ホッと安堵のため息をついていたら、玄関ベルが鳴った。インターホンに出てみると、相手は鷺沼だった。
「おはようございます」
四十代の眼鏡の似合う秘書は、両手に買い物袋をさげて玄関から入ってきた。この人はベータで、結婚もしていると高梨から聞いている。だから陽斗の世話も任されたらしかった。
「おはようございます」
陽斗もペコリと挨拶を返す。
「すぐに朝食出しますから。リビングで待ってて下さい」
「あ、はい。すいません」
朝日さす広々としたリビングに入り、ソファに腰かける。この部屋もまた、天井が高く英国趣味のレトロな雰囲気に満ちていた。
鷺沼はキッチンで手早く食事を作ると、リビングで待っていた陽斗を呼んだ。
「どうぞ、こちらに」
案内されて入った広いダイニングは、花柄の美しい壁紙に彩られ、大きな絵画も飾ってあった。
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