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第69話

 高梨は手をとめて、陽斗を見つめてきた。  「一目惚れ、って言ったら信じる?」 「それにしちゃあ度のすぎた求愛でした」  陽斗は肩をすくめて、サラダの赤インゲン豆をフォークですくった。 「あんなに初対面から好き好き言われたら、かえって怪しく思えてきます。なんか、この人ヘンだとか、何か裏があるんじゃないかって」  その言葉に、高梨が小さく吹き出した。 「そんな風に思われてしまうんだ」 「だって、たとえ一目惚れだとしても、高梨さん、しょっばなからテンション高すぎだったし」  高梨は陽斗の疑問に苦笑した。 「そんなに僕は、舞いあがっていたかい?」 「……ん」  陽斗は出会ったときのことを思い返して頷いた。初対面でのなれなれしい態度、そして翌日すぐのプロポーズ。 「じゃあ、種明かしをしよう。君にこれ以上嫌われなければいいんだけど。今まで隠してきたことを、告白するよ」 「え」  陽斗が顔をあげる。目の前の相手は、ワインを手に話を続けた。 「まず、君を見つけたのは、光斗君のフェロモン型が僕のマッチング候補としてあがってきたからなんだ」  「……え」  陽斗は目をみはった。 「ああ、けど、心配しないで。彼を遠くから観察したことがあったけれど、特に何も感じなかったから」 「……そうなんだ」  ホッとしながら、続きを聞く。 「光斗君を調べている段階で、君の情報も入ってきた。双子のオメガの兄がいることが。けど、君はどこの調査会社にも登録されていなかった。それで、不思議に思って君の姿も確認しにいったんだ。六ヶ月前のことだった」 「半年も前に?」 「そう。そのときに、僕は君を見て、心臓に電流を通されたような衝撃を覚えた。――あのときのことは忘れられないな。天地がひっくり返るような感覚だった」 陽斗は瞬きもせずに、目の前の人を見続けた。

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