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第82話 *
自分の反応と声が信じられなくて、けれどとめることもできなくて、陽斗は欲情に流されるまま、幼い子供のように駄々をこねてしまっていた。
「も、も、ヤだ、やだよぅ」
ボトボトとこぼれる体液が、高梨の服を汚す。情けなくてまた涙がこぼれた。
陽斗が滴らせた液体は、相手のシャツからボトムまで線を描いて染みを作っている。雫の終りは、高梨のちょうど股間を濡らしていた。
「…………」
ハァハァと喘ぎながら、男の股を見る。するとそこはゆるく持ちあがり、服地の下に重量のある雄が首をもたげているのがわかった。
じっと見つめていると、高梨が頭を撫でてくる。
「よく頑張ったね」
「……服が」
「ああ、気にしなくていいよ」
「ちが、服の下が」
「うん?」
陽斗は俯いたままたずねた。
「高梨さんも、したいの?」
自分が喘いでるところを見て、この人も兆したのか。
「いや。僕はいいよ」
「……どうして」
高梨が陽斗の髪にキスをする。
「これは君のための治療だから」
「……」
ああ、そうなのか、と少しガッカリする思いでその言葉をきいた。
陽斗が発情していないから。だからしたくなるほどの興奮は得られていないのだ。
彼はまだ理性が働いているから踏みとどまれている。発情していない陽斗にさほどオメガの魅力を感じていないとも考えられる。
どちらにせよ、我を忘れて襲いかかるほどの欲望は生じていないのだ。
こっちは死ぬほど喘がされたってのに。
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