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第84話 真夜中のおうちごはん
◇◇◇
真夜中に、喉の渇きを覚えて目を覚ます。暗い部屋にはもう高梨はいなかった。枕元の時計は午前二時を指している。
陽斗は水が欲しくなり、ベッドをおりて服を着ると部屋を出た。
台所にいくために、暗い廊下を手探りで進んでいく。フットライトもないので電灯のスイッチの場所がわからず、少しウロウロしていたらチェストに足をぶつけてしまった。
「痛て」
小さな悲鳴がもれる。すると少し離れた場所にあったドアがあいて人が飛び出てきた。
「どうしたの?」
声の後に、電灯がともり視界が明るくなる。部屋着の高梨が廊下に現れた。
「あ、すいません。起こしちゃった? 水を飲みにいこうとしてぶつかったんだ」
「大丈夫? 怪我は?」
高梨が近よってくる。
「ないです。いいから、寝てて」
「いや。寝てないから。水が欲しいのなら取ってきてあげる。陽斗君のほうこそ寝てなさい。足元がふらついてる」
腕を取られて、部屋に戻された。
「高梨さん、寝てなかったの?」
「仕事がちょっと残っててね。それを処理してた」
「こんな夜中に?」
「向こうは夜じゃないから」
その言葉に、海外とやり取りしていたことがわかる。
「寝なくて平気なんですか?」
「僕はショートスリーパーだから平気さ」
高梨は陽斗をベッドに入れると、「ちょっと待ってなさい」と言い残して出ていった。しばらくするとペットボトルを手に戻ってくる。
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