84 / 158

第84話 真夜中のおうちごはん

◇◇◇  真夜中に、喉の渇きを覚えて目を覚ます。暗い部屋にはもう高梨はいなかった。枕元の時計は午前二時を指している。  陽斗は水が欲しくなり、ベッドをおりて服を着ると部屋を出た。  台所にいくために、暗い廊下を手探りで進んでいく。フットライトもないので電灯のスイッチの場所がわからず、少しウロウロしていたらチェストに足をぶつけてしまった。 「痛て」  小さな悲鳴がもれる。すると少し離れた場所にあったドアがあいて人が飛び出てきた。 「どうしたの?」  声の後に、電灯がともり視界が明るくなる。部屋着の高梨が廊下に現れた。 「あ、すいません。起こしちゃった? 水を飲みにいこうとしてぶつかったんだ」 「大丈夫? 怪我は?」  高梨が近よってくる。 「ないです。いいから、寝てて」 「いや。寝てないから。水が欲しいのなら取ってきてあげる。陽斗君のほうこそ寝てなさい。足元がふらついてる」  腕を取られて、部屋に戻された。 「高梨さん、寝てなかったの?」 「仕事がちょっと残っててね。それを処理してた」 「こんな夜中に?」 「向こうは夜じゃないから」  その言葉に、海外とやり取りしていたことがわかる。 「寝なくて平気なんですか?」 「僕はショートスリーパーだから平気さ」  高梨は陽斗をベッドに入れると、「ちょっと待ってなさい」と言い残して出ていった。しばらくするとペットボトルを手に戻ってくる。

ともだちにシェアしよう!