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第87話
「うん。それで?」
『高梨さんは独自のバース性ネットワークを持っているらしくて、それを使って調べてくれたんだ。そしたら、高梨さんの遠縁にあたる人がベストマッチングしたらしいんだよ』
「遠縁の人?」
『そう。職業は医師で、年齢は三十四歳。今は研究のためにアメリカにいるんだって。向こうにもオレの書類が渡ったらしくて、あさって、その人とネット回線を通じてお見合いするんだよ』
「へえ……」
高梨の血縁が、自分の弟の『運命の番』になるかもしれない。お互い血が近いとやはりそういう面でも繋がりができてくるのか。
『お見合いの結果は、またしらせるから』
「うん、楽しみにしている。うまくいくといいな」
『頑張るよ。陽斗も治療を頑張ってね。早く会いたいからさ』
「わかった。じゃあ、吉報待ってるからな」
笑顔で電話を切って、ほうっと息をつく。
光斗に番候補が見つかった。それも、とても条件のよさそうな人が。
「本当に、うまくいくといいな……」
せめて光斗だけでも。運命の相手と幸せになって欲しい。陽斗は祈るような気持ちでスマホを握りしめた。
その夜は、高梨にお礼もかねて美味しい手料理を振る舞おうと、陽斗は台所に長い時間こもって夕食の準備をした。
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