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第95話
「光斗と昼間、電話で話をしました。高梨さんの紹介で、番候補の人と見合いすることになったって」
「うん。僕も帰宅前、先方とビデオ通話で連絡を取った」
「高梨さんの親戚の人ですって?」
「そう。はとこにあたるのかな。名前は津久井芳樹 。祖父の法事ぐらいでしか顔をあわせたことはなかったけれど。彼は親族の間でも評判がいいよ」
「そうなんですか」
高梨からもいい人という言質を取れて、安堵に深く椅子にもたれかかった。
「ありがとうございます、高梨さん。これで本当に安心できます」
「役に立ててよかったよ」
電話での光斗の声も弾んでいた。だからきっとうまくいくだろう。運命の番であれば、惹かれあわないはずがない。
陽斗がやっと心からの明るい笑みを見せると、高梨も同じように微笑んだ。
食事を終えて、ふたりでテーブルを片づけた後、陽斗は自室に戻ろうとする高梨をつかまえて言った。
「高梨さん」
「うん?」
「今夜はさ、何もせずゆっくり休んでくれませんか? その代わり、俺、明日の夜頑張るから」
彼の睡眠時間を削りたくなくてお願いする。陽斗の提案に、高梨は少し戸惑った表情になった。
「頑張るって。……君は」
相手の体調を案じる視線を向ければ、本気で心配している様子が伝わったのか高梨が微苦笑する。
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