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第97話

「言葉の揺さぶりをかけると、気持ちが表に出てしまうね」 「意地悪い」 「うん、ごめん。でも、そうやっていじめるのも楽しいんだ」 「性格悪!」  陽斗が乱暴に腕を振り払おうとすると、もう一度抱きしめられる。 「どうか言葉で教えてくれないか。君の本心を」  息が苦しくなるほど拘束されて、まるで胸の中を直接高梨の手で掻かれているようなゾクゾクした気分になった。  そうするともう、嘘もつけないし逃げることもかなわなくなる。  陽斗は観念して、大きくため息をついた。ハッキリ言わないと解放してもらえそうにない。 「……だから、……だよ」  ボソリと呟くと、頭上から「え?」と問われる。 「もう一度、言って?」 「だから、一ヶ月後に、ヤリ捨てられるのが、嫌だから!」  自棄(やけ)になって、大きな声で告げた。  もうこれは、あなたのことが好きだから、離れたくないと言っているようなものだ。愛の告白だ。 「それで、頑張って発情しようとしているの?」 「そうだよッ」  顔が赤くなっている自覚はあった。けれどとまらない。 「ああ」  高梨が心底嬉しそうな顔になる。 「それがプレッシャーになっていたんだね。僕に捨てられるのがそんなに怖かった?」  高梨が弾んだ声できくものだから、陽斗は恥ずかしくなって告白をごまかした。

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