98 / 158

第98話

「ていうか、発情期のこないオメガはベータと同じだ。そんなんじゃ、番になっても跡取りも作れない。高梨さんは資産家だし、あなただって家を守るためにこの家に迎えられたんでしょう? だったら俺は、ぜんぜん適任じゃない。けれど、ヤリ捨てられるのは悔しいし……」 「僕の家のことまで心配してくれてたんだ」  甘く蕩けるような声で、ぎゅううっと抱きしめられた。  「陽斗君」  少し切なさも混じった声音になる。 「君は今、僕のこと、十段階でどれくらい好きになってる?」 「え?」  契約をする前にたずねられた問いを、またきかれた。 「教えて欲しいんだ」 「……」  陽斗はちょっと考える振りをした。最初から十段階なんかじゃ表せないほど惹かれていたけれど、何だか認めるのもシャクでしばし黙りこむ。心の中すべてを相手に明け渡すなんて、そこまで隷属したくない。それはやっぱり機能不全オメガの矜持だった。 「八、ぐらい、かな」  強がりをこめた数字に、男が苦笑する。 「そっか」  もしかしてこの人には、全部わかってしまっているのかもしれないが。 「三段階あがったな。嬉しいよ」  そうして陽斗のつむじにキスを落とした。 「ね、今夜は、一緒のベッドで寝ないかい?」 「一緒の?」 「うん。何もせず、ただ抱きあって眠るんだ。そういう日があってもいいだろう?」 「……そうですね」  きっと素晴らしく心地いいことだろう。  陽斗が賛成すると、高梨は「じゃあ、寝る準備ができたら僕の部屋においで」と耳元で優しくささやいた。

ともだちにシェアしよう!