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第98話
「ていうか、発情期のこないオメガはベータと同じだ。そんなんじゃ、番になっても跡取りも作れない。高梨さんは資産家だし、あなただって家を守るためにこの家に迎えられたんでしょう? だったら俺は、ぜんぜん適任じゃない。けれど、ヤリ捨てられるのは悔しいし……」
「僕の家のことまで心配してくれてたんだ」
甘く蕩けるような声で、ぎゅううっと抱きしめられた。
「陽斗君」
少し切なさも混じった声音になる。
「君は今、僕のこと、十段階でどれくらい好きになってる?」
「え?」
契約をする前にたずねられた問いを、またきかれた。
「教えて欲しいんだ」
「……」
陽斗はちょっと考える振りをした。最初から十段階なんかじゃ表せないほど惹かれていたけれど、何だか認めるのもシャクでしばし黙りこむ。心の中すべてを相手に明け渡すなんて、そこまで隷属したくない。それはやっぱり機能不全オメガの矜持だった。
「八、ぐらい、かな」
強がりをこめた数字に、男が苦笑する。
「そっか」
もしかしてこの人には、全部わかってしまっているのかもしれないが。
「三段階あがったな。嬉しいよ」
そうして陽斗のつむじにキスを落とした。
「ね、今夜は、一緒のベッドで寝ないかい?」
「一緒の?」
「うん。何もせず、ただ抱きあって眠るんだ。そういう日があってもいいだろう?」
「……そうですね」
きっと素晴らしく心地いいことだろう。
陽斗が賛成すると、高梨は「じゃあ、寝る準備ができたら僕の部屋においで」と耳元で優しくささやいた。
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