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第99話 ベッドの中で
◇◇◇
シャワーを浴びて、ジャージの寝間着に着替えて高梨の寝室を訪問する。ノックをして部屋に入ると、彼もスウェット地のルームウェアで待っていた。
「狭いベッドで申し訳ないね」
「構わないです。でも、この部屋はホント何もないですね」
ふたりでベッドに入り、ゴソゴソと寝心地のいい体勢を探しながら話をする。
「仕事で必要なものは書斎に運んでるから。それに僕は別に欲しいものもないし」
「そうなんですか。趣味とかは、ないんですか」
「ないね」
お互い向きあう形で横たわり、目をあわせた。
「僕は生まれたときから、持ちものはすべて父親が管理していたし、与えられるもの以外は持つことを許されなかったんだ」
「……そんな」
薄闇で目を見ひらく。
「日用品から勉強道具、靴下一足、消しゴム一個まで、父の選んだものを使っていた。僕自身に選択の自由はなかった」
「本当に? お小遣いは? 好きなものは買わなかったの? お菓子とか、玩具とか」
「小遣いはもらったことがない。必要なものは最高級の品を揃えられていたし、食べものも栄養管理されてキチンと与えられていた。玩具の類いは持ったことがない。ついでに言えば友人もいない。人間関係も彼に管理されていたから」
「そんな生活、信じられない。窮屈じゃなかったんですか」
「僕にとってはあたり前だったんだ。馴染みすぎてて疑問も持たなかった。幼い頃から後継者のレア・アルファとして、ふさわしい行動を取るように言い聞かされていたしね。父はいつも言っていた。お前は特別な人種で、普通人とは違う生き方をしなければならないと。だから、彼が突然病で死んだとき、次の指示がまったくなくなったことに呆然としたものだよ」
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