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第101話

「じゃあ、今度、またあそこに泊まりにいこうか」 「……え?」 「そうしたら、また出るかもしれない」 「ああ、……うん、まあ……」  それには尻ごみしてしまう。再び泊まって、次はフェロモンが出なかったらと思うと、落ちこみ具合も半端なくなりそうで怖い。  モゴモゴと返事をごまかした陽斗に、高梨は理由が推測できたのだろう、あえて話を打ち切った。 「もう寝ようか。明日も早いからね」 「ぅん……」  陽斗が少し背中を丸めると、上半身を包みこむように高梨がそっと抱きしめてくる。  ただ身体を触れあわせる行為に、陽斗は深い安堵を覚えた。  こうやって、くっついて眠るだけで、こんなにも心は満たされる。この充足感だけで運命の番になれたなら、どれだけいいだろう。    ――この人のことが好きだ。  ずっと一緒にいたい。こうやって夜をすごしたい。  けれど期限の日は迫っている。三十日を迎えるとき、自分はいったいどうなっているのだろうか。  相手の体温を感じつつ、つらつらとそんなことを考えているうち、陽斗はいつの間にか深い眠りに落ちていた。

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