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第102話 光斗の相手
◇◇◇
その週の終わり、光斗がアメリカに滞在中の番候補である津久井とネット回線を使ってお見合いをした。
夕刻、リビングで結果報告を待つ陽斗のもとに、光斗からビデオ通話でメッセージが届く。仕事が休みの高梨も一緒にそれを観た。
『すっごく素敵な人だったよ! 一目会ってすぐにわかった。この人がオレの運命の相手だって。向こうもそう感じたって。ああ、この感動をどう伝えていいか全然わからない。本当にもう、早く彼本体に会いたいー!』
身悶えんばかりの弟が、ノートPCの画面一杯にあらわれる。
「よかったな」
陽斗が答えると、光斗が身を乗り出してきた。
『あのさ、急なんだけど、津久井さんさ、四日後に休暇を取って一時帰国するらしいんだ。それで、そのとき、もしかしたらオレたち、番契約をするかもしれない』
番契約とは、うなじを噛んでもらい、生涯の伴侶となる約束をするものだ。実質の結婚といっていい。
「そうか。おめでとう。じゃあお祝いしないとだな」
『……陽斗』
画面の向こうの光斗が、ふいに顔をクシャッとさせる。
『早く陽斗にも会いたいよ。それでぎゅーって抱きあいたい。今の生活に不自由はないけど、やっぱり陽斗と離れてると淋しい。発情期もひとりだと不安だよ。陽斗の鳥雑炊も食べたい』
「わかった、うん。ごめん。もうすぐ帰るからさ」
『うん、待ってる。でも、陽斗も治療頑張ってるんだよね』
「……ああ」
『ならもう少し我慢する』
ちょっと涙目になっている弟に、陽斗は苦笑した。
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