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第103話
幼い頃から支えあうようにして暮らしてきた、たったひとりの弟。その大切な肉親の巣立ちのときが近づいてきている。祝福する気持ちと共に一抹の淋しさも禁じ得ない。それは光斗も同じなのだろう。微笑みながらも涙を浮かべていた。
光斗との通話が終わった後、津久井からもネットを通じてテレビ電話がかかってきた。
『久しぶりだね、唯一輝 君』
高梨を下の名前で呼んだスーツ姿の紳士は、落ち着いた雰囲気の人だった。高梨とはまた違う魅力のある、精悍で男らしい顔立ちの、知的で真面目そうな男性だ。
「こんにちは、芳樹 さん」
『そちらにいらっしゃるのは、もしかして、光斗君のお兄さんかな』
一緒に画面に映っている陽斗に目を移してきいてくる。
「はい、はじめまして」
陽斗は画面越しに挨拶をした。
『やはり似ていらっしゃいますね、光斗君と』
陽斗にも敬語を使う丁寧さに好感を覚える。この人になら光斗を託しても心配はない気がした。
「光斗のことを、どうぞよろしくお願いします」
頭をさげてお願いすると、『こちらこそ、よろしくお願いします』と返される。
そうして和やかに数分話をした後、別れの挨拶をしてネット通話を終えた。
はふ、とひとつ息をついて、ソファの背にもたれる。大きな荷物が肩からおりた安心感に、自然と笑みがこぼれた。
「これで光斗のことは、もう心配しなくてすむ」
「そうだね。相手がまったく知らない人より、親戚なら僕も安心だ」
「ありがとう、高梨さん。本当に何て礼を言っていいのか」
「喜んでもらえて嬉しいよ」
隣に腰かけていた高梨も同じようにゆったりとソファに背中を預けた。
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