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第105話
「……高梨さん」
「ん?」
キスの合間に話しかける。
「何だい」
答えを待ちながら、相手がさらに唇を重ねてくる。
「あのさ、俺。……もうすぐ、契約が切れるじゃない」
「うん」
上唇をかるく食まれる。
「三日後だね。それで?」
「うん、それで、その前に、かかりつけの医者に頼んで、発情誘発剤を処方してもらおうかと思うんだ」
高梨の唇がとまる。陽斗は話し始めてしまった勢いに任せてそのまま続けた。
「それを飲めば、発情するかもしれない」
前回、二十歳の時に誘発剤を飲んだときは、気分が悪くなるだけで発情しなかった。けれど今回は、もしかしたら成功するかもしれない。
高梨は少し考える様子で、唇を頬に移し、キスしながら答えてきた。
「あれは、あまりよくないって聞いたことがある。副作用が大きいんだろう? しかも薬に頼って発情しても、体質自体が変わらなければ、ずっと薬を飲み続けなければ発情しないとも聞いている」
「うん。そうなんだけどさ……」
高梨が陽斗を抱きよせる。その腕の中で、陽斗は考えていたことを伝えた。
「でもひとつのけじめとして。俺もたしかめたいんだ。もしかしたら、俺は幼い頃のトラウマ云々 じゃなく、本当は生まれつき発情しない体質なんじゃないかって。そうしたら諦めもつくし」
「しかし君は一度、ちゃんとフェロモンを出してる」
高梨が陽斗の額に、自分の額をくっつけて言った。
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