114 / 158

第114話

「何だ? 高梨さんからの通話だ」  メッセージではなく直接電話がきたことに、不思議に思いつつ画面をタップする。耳にあてると、相手の少し慌てた声がした。 『陽斗君? 今何をしてる?』 「え? 今は、……えっと、夕食の準備をしようかとしてました」 『そうか。じゃあ、いいかい、落ち着いて聞いてくれ。今さっき、鷺沼から連絡があったんだが、――光斗君が、学校で、トラブルに巻きこまれたらしい』 「ええっ」  驚く陽斗に、高梨が続ける。 『光斗君から、君に連絡は入った?』 「いいえ。そんなこと、全然」 『じゃあ、これからかな。とにかく、以前から彼につきまとっていたらしきストーカーが、光斗君に悪さをしようとしたらしい。直前にうちのボディガードがとめに入り、事なきを得たようだが、光斗君は保護されて、今は警察と聞いた。怪我はないそうで、その点は安心して欲しい。事情聴取が終わったら、とりあえずそちらに送らせる。彼も不安だろうから、今夜は君がついててあげたほうがいい。うちに泊まらせよう』 「ストーカーは逮捕されたんですか」 『ああ、ボディガードが捕まえて警察に突き出した。詳しいことは光斗君に聞くといい』 「そ、そうですか」 『じゃあ、今日は仕事を早めに終わらせて帰宅するから』 「ありがとうございます」 『帰ったら僕も詳細な経緯を聞くよ。あとでまた』 「はい」

ともだちにシェアしよう!