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第116話
彼が言うには、犯人は以前から光斗に密かに想いをよせていたアルファで、襲う機会をずっとうかがっていたということだった。
「駅のホームで光斗さんを押したのも、その男でした。押して同時に助けて、信頼を得ていたようです。陽斗さんを家の前で襲ったのも彼でした。それは、警察に提出された画像で同一人物と確認されました。顔は不明瞭でしたが、服装が一致していましたので。仲のいい親友ということで光斗さんを油断させていたのでしょう、今日の午後、学校内の資料室に光斗さんを言葉巧みに連れこんで、無理矢理行為に及ぼうとしたのです。それを、察したボディガードが踏みこんで現場を押さえました」
「そんな……」
「男は、光斗さんが明日、番候補と会うと聞いて、焦ったようでした」
「そうだったんですか」
陽斗は光斗の肩を抱きよせた。
「怖かっただろ」
「……うん。でも、すぐに助けてもらえたから。首輪をペンチで切られただけですんだ」
「よかったよ。何もなくて」
陽斗は改めて鷺沼に礼を言った。高梨が帰ってきたら、彼にも感謝の言葉を伝えなければならない。
「男は暴行罪と器物損壊罪で逮捕されました。これでストーカー規制法が適用されれば、もう光斗さんのもとにくることはないでしょう。これからのことは、社長が弁護士も手配しますので、そちらを通じて解決していけばいいと思います」
「何から何まで、すみません」
「構いませんよ。我々も役に立ててよかったです」
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