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第119話
もう、逃げないで覚悟を決めて、ちゃんと彼と向きあわなければ。
発情がない自分とも。
そしてふたりの関係に、明確な答えを出さなければ。
そのときがきている。
陽斗はギュッと拳を握りしめた。
「……あれ」
考えこんでいると、光斗が不思議そうな声をもらした。目を向ければ、ペットボトルを手に首を傾げている。
「どした?」
陽斗は弟に近よった。
「ウエッ。これ、ヘンな味がする」
顔をしかめて舌をだす光斗の横に腰をおろし、ペットボトルを受け取る。ラベルには水としか書いてない。けれど目の前にかざしてみれば、ボトルの底にうっすらと粉状のものが沈殿しているのが見えた。
「これ、何か溶かしてあるぞ」
「えっ」
ふたりで目をこらしてボトルを確認する。たしかに何かが混入しているようだ。
「何だろう、飲んじゃったよ」
「このボトル、どこで手に入れた?」
「学校で買って、カバンに入れてた。……けど、あいつが」
「あいつ?」
「そうだ、あいつ、ストーカーしてたあいつが、オレのカバン、触ってた。それで、喉渇いてないかって、しつこく言ってきてた。……何でだろうって、不思議だったけど気にしてなくて……」
「光斗」
弟の手が震え始める。
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