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第126話

「入れてくださいよ! お願いしますよ! オメガがいるんでしょう!」 「まずいな」  高梨は自身も震え始めた手で、ドアノブを押さえた。 「陽斗君、君は光斗君と二階へいきなさい。そうして、鍵をかけて絶対に外に出てはならない。僕はあいつを黙らせてくる」 「え?」 「早く、いくんだ」  扉から離れるよう高梨が指示する。陽斗は後ずさりながら、リビングのドア前で(くずお)れている弟のもとへと移動した。  それを確認して、高梨が玄関扉をあけると外に飛び出す。すぐに外から、「ウワッ」「ギャッ」という叫び声が聞こえてきた。  陽斗は急いで光斗を抱きかかえると、廊下を進み、階段へと向かった。 「大丈夫か、光斗」 「陽斗……あの金髪のアルファの人、どうなったの」 「高梨さんなら心配するな」 「あの人が、高梨さんなんだ……」  光斗の息もあがっている。頬が赤みを帯び、瞳もうつろになっていた。きっと強い催淫剤を飲まされたのだろう、いつもの発情期とはフェロモンの量も違っている。同じオメガである陽斗でさえ、息苦しくなるほどのきつい香りだった。 「さあ、こっちだ」  階段をあがり、寝室として使っている客室にふたりではいる。そして鍵をかけた。  よろめく光斗を支えてベッドまで歩き、シーツに横たえる。 「つらいかもしれないけど、ここでいつものようにすごしていればきっと楽になるから」 「早く抜きたい。抜いていい?」 「うんわかった」  ティッシュケースを引きよせ、光斗に手渡す。

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