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第130話

「高梨さん、俺を見て」  両手を伸ばして、高梨の頬を掴む。 「光斗じゃなくて、俺のほうを見て」  いつの間にか泣き声に変わっていた。 「あなたが好きなんだ」  しかし屈強なレア・アルファは、陽斗などいないかのように進んでいく。 「あなたが好き。好きなんだよ」  自分のほうを向かせたくて、必死に言いつのった。 「番になりたい。うなじを噛んで欲しい。他のオメガに取られたくないよ」  それでも高梨の瞳はもう戻らない。 「陽斗……」  気づけば、背中からも光斗に抱きつかれていた。 「欲しい、欲しい……っ」  ギュッと抱きしめて、腰を擦りつけてくる。熱を持った若茎は硬く勃ちあがっていた。 「ごめん、陽斗。オレのせいで……。オレだって、ホントはこんなことしたくない、のに……なのに」 「光斗」 「挿れて欲しい、奥の奥まで、突いて、突いて……欲し、ああダメだ、そんなことしたら……けど、我慢できない……ごめん、陽斗、ゴメン」  陽斗は身をよじって後ろを向き、光斗と抱きあった。 「大丈夫だ、お前のせいじゃない。これは仕方ないことなんだから」  幼いときから、発情で苦しむたびに言い聞かせてきた言葉を繰り返す。発情は決して、オメガ個人のせいではないのだ。何の因果か、自分たちに与えられた運命がこうだっただけで。 「陽斗、陽斗……」  光斗が泣きながら腰を動かす。魂のつながった双子の弟のつらくてたまらないという仕草に、陽斗の胸も張り裂けそうになった。

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