130 / 158
第130話
「高梨さん、俺を見て」
両手を伸ばして、高梨の頬を掴む。
「光斗じゃなくて、俺のほうを見て」
いつの間にか泣き声に変わっていた。
「あなたが好きなんだ」
しかし屈強なレア・アルファは、陽斗などいないかのように進んでいく。
「あなたが好き。好きなんだよ」
自分のほうを向かせたくて、必死に言いつのった。
「番になりたい。うなじを噛んで欲しい。他のオメガに取られたくないよ」
それでも高梨の瞳はもう戻らない。
「陽斗……」
気づけば、背中からも光斗に抱きつかれていた。
「欲しい、欲しい……っ」
ギュッと抱きしめて、腰を擦りつけてくる。熱を持った若茎は硬く勃ちあがっていた。
「ごめん、陽斗。オレのせいで……。オレだって、ホントはこんなことしたくない、のに……なのに」
「光斗」
「挿れて欲しい、奥の奥まで、突いて、突いて……欲し、ああダメだ、そんなことしたら……けど、我慢できない……ごめん、陽斗、ゴメン」
陽斗は身をよじって後ろを向き、光斗と抱きあった。
「大丈夫だ、お前のせいじゃない。これは仕方ないことなんだから」
幼いときから、発情で苦しむたびに言い聞かせてきた言葉を繰り返す。発情は決して、オメガ個人のせいではないのだ。何の因果か、自分たちに与えられた運命がこうだっただけで。
「陽斗、陽斗……」
光斗が泣きながら腰を動かす。魂のつながった双子の弟のつらくてたまらないという仕草に、陽斗の胸も張り裂けそうになった。
ともだちにシェアしよう!