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第131話
「お……オレのせいで、いつも、陽斗には迷惑かけてっ。陽斗は、オレの世話だけで、こんなに、つらい目にあって……オレ、オレなんか、いなくなれば、いいのにっ」
顔を歪めて涙を流し、光斗は自分の首に手をかけて、細い首を絞め始めた。発情が苦しすぎてパニックを起こしかけているのだ。
「光斗」
「陽斗の、大事な人にも、迷惑かけたくない。オレなんて消えてなくなったほうがいいんだ……っ」
「ダメだ、やめろ」
陽斗は必死に光斗の手を引き剥がした。
「ごめっ、ごめ、陽斗っ」
光斗の両手首を掴んで、それ以上自分を傷つけさせないようにする。
すると今度は、後ろから高梨に、光斗ごと抱きしめられた。
「君を裏切りたくない……」
陽斗の肩を抱く手の甲からは血が流れている。
「抱きたいのは君だけなのに」
その言葉を聞いた途端、背筋に震えが走った。
「……俺も」
高梨としたい。
誰にも渡したくない。たとえ弟であっても。
陽斗は渾身の力を振り絞って体勢を変え、背後の人と向き直った。
「高梨さん、俺を抱いてよ」
高梨の首に手を回して、自分に引きよせる。
「俺も、あなたとしたい。他の誰ともして欲しくない」
「陽斗君」
「光斗のフェロモンで、俺を抱いて」
高梨の瞳が、昂揚に翳っていく。
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