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第151話

「光斗、噛んでもらった?」 「うん。陽斗もだね」 「ああ」  ふたりで互いのうなじをたしかめあう。そこにははっきりと歯形がついていた。 「オレたちってやっぱ双子だよね。一緒に番を得ることができるなんてさ」 「そうだな」  不思議な巡りあわせでこうなったことを、誰にともなく感謝したくなる。 「な、光斗」 「うん?」  陽斗は弟にそっと耳打ちをした。 「津久井さん、怒ってなかった? 俺が、その、お前となりゆきだけど、しちゃったこと」 「ああ」  光斗は陽斗の心配を知り、安心させるように微笑んだ。 「大丈夫。怒ってないよ。津久井さんには、以前から陽斗のことを頼りになる兄貴だって話してたし。あの人は医者だから、発情中のオメガがどれだけ大変になるのかもよく理解してるしね」 「……そか、ならよかったよ」  ホッと息をつくと、光斗はちょっと悪戯(いたずら)っぽい目をする。 「でも少し妬いてたかな。仲がよすぎるって」 「えっ」 「けどそれは、高梨さんも同じだと思うよ? オレにライバル心むき出しにしてたじゃん」 「……」  楽しそうに笑う光斗に、陽斗は昨夜ふたりが自分を取りあうようなやり取りをしていたことを思い出して頬が赤くなった。 「運命の番の絆も強いけど、オレたち兄弟愛だって負けないほどだよ。オレは一生、陽斗のことも好きだから」 「……うん。俺もだよ」  ふたりで顔をよせあって微笑んでいると、そばから高梨に呼ばれる。 「さあ、可愛い番たち。食事にしよう。お腹がすいたよ」

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