156 / 158

第156話

 だったらこれからは、できる限りの愛を返していかなければ。 「俺でよければ、ぜひ、働かせてください」  しっかりと返事をすると、今度は高梨が目をみはった。 「いや。そうか。ならよかった」  すぐに承諾するとは思っていなかったようで、少し落ち着きをなくす。きっと説得するための言葉をたくさん用意していたのだろう。あっけなく答えをもらえて、素の顔になって喜んだ。 「いやね、君がうちのホテルで働いてくれたら、僕もいつでも様子を見にいくことができるし。悪い虫がつかないように見張れるし。だから安心かなと」 「番になっても見守り隊を続けるつもりなんですか」 「そりゃあ、大事な僕の奥さんになる人だからね」 「えっ」 「え?」  僕の奥さん、という言葉に驚くと、高梨もなぜそんな反応をするのかと見返してくる。 「結婚、してくれるんだよね?」  視線をあわせながら問われた。 「…………」  陽斗はそんな先のことまで考えていなかった。  けれど。  番になったのなら。きっと、そうなるのだろう。 「……そか」 「大事にするよ」  高梨が手をのばしてきて、陽斗の手のひらをギュッと握る。

ともだちにシェアしよう!