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第6話 それぞれの夜
沢井は黒崎の上に伸し掛かかった。
まだ自身の雄を彼の中奥深くに挿入したまま、激しい情交の余韻にひたる。
沢井の体の下では黒崎が大きな瞳を快感に潤ませ、小さく開かれた唇の端から唾液を一筋滴らせている。
それは、沢井だけが見ることができる、黒崎の艶めかしく淫らな表情。
黒崎を自分の腕に抱く度、沢井はどんどん彼の虜になっていってしまう。
沢井に人を愛することの切なさと幸せを教えてくれたのは、黒崎だった。
汗で額に貼りついた前髪を長い指ではらってあげながら、沢井は思う。
絶対にこの天使を、他の誰にも渡さない、と。
黒崎はまだ、快楽の波にたゆたい、ぼんやりと意識を彷徨わせている。
沢井は再びゆっくりと動き始めた。
今一度、愛する人を、気も狂わんばかりの快感で泣かせるために……。
同じ頃、独りで住むには広すぎる3LDKのマンションの部屋で、鈴本は黒崎の写真をおさめたアルバムを眺めていた。
それらの写真のすべてが隠し撮りしたものだった。
……本当に綺麗だ。このオレの隣にいるのにふさわしい美貌。
今日、彼と初めて話をした。
黒崎の声は甘く、どこかセクシーさも秘めていて、彼の美貌にぴったりのものだった。
協調性がなく、人とかかわることが苦手だという彼と、食事をともにすることができたのだから、第一段階としては成功したと言っていいだろう。
彼はほとんど自分のことは話してくれなかったが、それはこれからのやり方次第でどうにでもなる。
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