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第16話 手を繋いで……
スーパーまでの道は人通りがなかったので、沢井と黒崎は手を繋いで歩いた。
二人とも普段は、外では恋人同士と分かるような振る舞いはしない。
けれどこの夜は、黒崎が、彼らしくもなく悪夢を引きずり不安がっていたので、沢井のほうから彼の手を握った。そしたら、黒崎のほうも握り返してきた。
沢井は恋人の綺麗な横顔を見つめる。
まだ少し顔色が悪いな……。
ここ数日、黒崎は具合があまり良くないように見える。ふとしたときに、とても疲れたような顔をするのだ。
ここんところハードワーク続きだったからなあ……。一度、休暇をとらせなきゃな。
沢井としては、愛する人の体のことはとても心配で、それでなくても、がんばりすぎるところがある彼を、ゆっくり休ませたいと思っていた。
だが、黒崎本人は向上心が強く、仕事を休むのを嫌がる。休暇を取るどころか、仕事がない日でもスキルアップの勉強を怠らないくらいだ。
でも、倒れてしまっては本も子もない。
ここは上司命令と強く出て、雅文に休暇をとらせよう。
沢井はそう決心した。
スーパーで晩御飯の材料とアルコール類を買って、帰り道はまた黒崎と手を繋いでマンションまで帰った。
愛する人と手を繋いで歩くのは、少し照れくさくて、でも、やはりとても幸せで、癖になってしまいそうだった。……照れ屋の黒崎がそうそう手を繋いでくれるとは思えないが。
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