17 / 69

第17話 料理と休暇

「はい、できたぞ。雅文」  沢井は二つのお皿にたっぷり盛ったレバニラ炒めを、ダイニングのテーブルに置いた。  先にテーブルに着いていた黒崎は、 「わー、すごくおいしそう! でも、オレ大丈夫かな? レバー」  期待半分、不安半分と言った顔を見せている。  沢井は自分の椅子に座ると、彼に自作のレバニラ炒めを勧めた。 「とにかく食ってみれば分かるから」 「うん」  黒崎はゆっくりとレバニラを口に運んだ。 「……うわ、おいしい! これならオレ、レバーいくらでも食べれるよ」 「だろ?」  沢井は得意げに微笑んだ。 「でも、どうして? これ全然レバーぽくないよね? どんな隠し味使ったの? 和浩さん」 「教えて欲しい?」 「うん。今度はオレが、和浩さんに作ってあげたいから」  なんて、グッと来るかわいいことを言う黒崎に、ノックアウトされてしまった。 「……このレバニラ炒めのコツは、まずレバーにおろしたショウガを……」  沢井の説明を、黒崎はすごく真面目な顔で聞いていた。  レバニラ炒めの作り方を伝授した見返りにと、沢井は黒崎に一週間の休暇をとるよう上司命令した。だが、彼は当然のごとく反発した。 「一週間も休みとったら、みんなに迷惑でしょ。ただでさえうちは外科の医師が人手不足だっていうのに」  確かに彼の言う通りではあるが、沢井にはなにより黒崎が大切だ。 「おまえの体のほうが大事だろ!」 「オレは別にどこもしんどくないもん」  それでも黒崎のほうもまったく折れる様子がないので、沢井はしかたなく譲歩した。 「じゃ五日間でいいから休め」 「やだ」 「雅文!」  ああだ、こうだと言い合って、結局、黒崎は三日間の休みをとることになった。

ともだちにシェアしよう!