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第17話 料理と休暇
「はい、できたぞ。雅文」
沢井は二つのお皿にたっぷり盛ったレバニラ炒めを、ダイニングのテーブルに置いた。
先にテーブルに着いていた黒崎は、
「わー、すごくおいしそう! でも、オレ大丈夫かな? レバー」
期待半分、不安半分と言った顔を見せている。
沢井は自分の椅子に座ると、彼に自作のレバニラ炒めを勧めた。
「とにかく食ってみれば分かるから」
「うん」
黒崎はゆっくりとレバニラを口に運んだ。
「……うわ、おいしい! これならオレ、レバーいくらでも食べれるよ」
「だろ?」
沢井は得意げに微笑んだ。
「でも、どうして? これ全然レバーぽくないよね? どんな隠し味使ったの? 和浩さん」
「教えて欲しい?」
「うん。今度はオレが、和浩さんに作ってあげたいから」
なんて、グッと来るかわいいことを言う黒崎に、ノックアウトされてしまった。
「……このレバニラ炒めのコツは、まずレバーにおろしたショウガを……」
沢井の説明を、黒崎はすごく真面目な顔で聞いていた。
レバニラ炒めの作り方を伝授した見返りにと、沢井は黒崎に一週間の休暇をとるよう上司命令した。だが、彼は当然のごとく反発した。
「一週間も休みとったら、みんなに迷惑でしょ。ただでさえうちは外科の医師が人手不足だっていうのに」
確かに彼の言う通りではあるが、沢井にはなにより黒崎が大切だ。
「おまえの体のほうが大事だろ!」
「オレは別にどこもしんどくないもん」
それでも黒崎のほうもまったく折れる様子がないので、沢井はしかたなく譲歩した。
「じゃ五日間でいいから休め」
「やだ」
「雅文!」
ああだ、こうだと言い合って、結局、黒崎は三日間の休みをとることになった。
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