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第19話 謎の電話
「和浩さん、お酒飲むでしょ?」
黒崎がウイスキーのグラスを出しながら、聞いてくる。
「ああ」
自宅で飲むときは、リビングのソファに並んで座って飲むのが二人のスタイルだ。
沢井はウイスキーの水割りを、黒崎はビールを飲み、ミックスナッツやチーズをつまみに、他愛のない会話を楽しむ。
程よく酔いが回り、頬をピンクに染めている黒崎が色っぽい。
沢井が彼を引き寄せ、口づけを交わそうとしたとき、色気のない音がムードをぶち壊すように鳴り響いた。
キッチンからスマートホンの着信音が聞こてきたのだ。
黒崎が、「あ」と小さく呟き、沢井の腕の中から抜け出す。
「スマホ。さっきのメールのときに、キッチンに置いてきたままだった」
そう言ってパタパタとリビングを出て行く。
沢井はせっかくの色っぽい雰囲気を邪魔したスマートホンに、心の中で悪態をついた。
誰だよ? こんな時間に電話なんかかけてくんのは? もしまた山本の野郎だったら、明日、殴ってやる。
「……はい。黒崎です」
キッチンから黒崎の声が聞こえてくる。
「もしもし? はい。……はい。……え?」
彼の声がオクターブ高くなったかと思った次の瞬間、なにかが倒れるような大きな音がした。
「雅文っ!?」
沢井が慌ててキッチンへ行くと、黒崎がテーブルの傍で倒れていた。
「雅文っ!! 大丈夫か!?」
彼の頭を動かさないように気をつけながら、そっと首の後ろに手を入れて、声をかける。
黒崎は意識を失っていた。
沢井は彼の手を取り、脈を確かめてみた。少し速い。
――すぐに黒崎は意識を取り戻してくれ、
「雅文……」
不安な気持ちで名前を呼ぶと、彼は大きな瞳をしばらく彷徨わせたあと、不思議そうな表情で沢井を見つめてきた。
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