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第20話 空白の時間

「大丈夫か!? 雅文」 「……和浩さん……、オレ、いったい……?」 「おまえ、スマホで話してる途中に倒れたんだよ」 「……あ、そうだ。キッチンでスマホに出たんだっけ。……あれ? でも……」  呟きながら体を起こそうとする黒崎を、沢井は慌てて制した。 「まだ起き上がらないほうがいい」  沢井は彼を抱き上げ、リビングのソファへ寝かせる。 「大丈夫か? 吐き気とかめまいはしないか? 頭痛は?」 「全然。平気。……あ、オレ、スマホ、キッチンに落としたまま……」  黒崎がまた起き上がろうとするのを沢井は止める。 「だから、まだ寝てろって。オレが持ってきてやるから」  沢井はそう言うと、キッチンに行き、床に落ちたままなっていた彼のスマートホンを拾って、黒崎のところへ戻った。  彼にスマートホンを渡す。 「はい、これ。……ところで、電話誰からだったんだ?」  沢井の問いかけに黒崎は曖昧な表情をした。 「電話……、そうだよね、オレ、電話に出たんだよね。でも、誰からだったのか思いだせないんだ」 「え……?」  沢井の胸に不安が込み上げてくる。 「着信履歴を見ても、公衆電話からになってるし。やだな。いったい誰からだったんだろ?」 「雅文、おまえ倒れたときに頭、打ってないか?」 「打ってないと思うけど……。電話に出てから、気が付くまでの記憶がはっきりしなくて……。貧血かな?」  黒崎の言葉に、沢井の不安は弥増すばかりだ。 「記憶が途切れたりすることは前にもあったのか?」 「時々、フウッとめまいがしたり、軽い立ちくらみがすることはあったけど、倒れたり、こんなふうに記憶が飛んじゃったことはないよ」 「…………」  沢井は少しのあいだ考え込んだあと、やにわに立ち上がった。

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