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第23話 夜の病院③

 沢井と田渕は、硝子越しに検査を受ける黒崎と、映し出される画像を見守っていた。 「……画像を見る限りでは、どこにも異常はなさそうだな」 「そうですね」 「腫瘍もないし、出血もない。血管が狭くなっているところもなし。脳には問題ないよ」  田渕の言葉に、沢井はホッと胸を撫で下ろした。 「急に意識を失ったのは貧血ですかね……?」  沢井の問いかけに、田渕はうなずいた。 「それが一番、考えられるな。でもオレが気にかかるのは、電話の相手をまったく憶えていないことのほうかな」 「やっぱりそうですか……。脳に異常がないとすれば、精神的なものが考えられますね」 「ああ。電話をかけたきた相手が、黒崎にとって忌むべき人物だったため、意識から追い出してしまった。つまり記憶から消し去ったわけだ、無意識に。そう考えたら、倒れたのも精神的ショックからと説明がつくしな」  田渕の話を聞いて、沢井がすぐに思い浮かべたのは、過去に黒崎を強姦した輩たちのことだった。  ……あいつらがまた雅文に近づいてきた?  その可能性に、沢井は激しい怒りと恐怖を覚えた。  もしも雅文をさんざん苦しめた輩たちが、再びあいつの前に現れたら、オレは絶対に許さないし、今度こそはオレが雅文を守って見せる……。絶対に……!  よみがえった激しい憤りとともに、沢井は強く心に誓っていた。 「……い? おい、沢井? 聞いてんのか?」  田渕の声に、沢井はハッと我に返った。 「あ、すいません。え……と?」 「だから、心の問題だとしたら、オレたちの出る幕じゃないってこと。心療内科か、精神科の医師に相談してみたらどうだ? ……そういえば新しく入った精神科の医師、鈴本とか言ったっけ。あいつなら黒崎と年も近いし、いいんじゃないか?」 「…………」  また鈴本か。沢井はうんざりした。

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