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第34話 叱咤

 沢井が振り向くと、川上がかすかに頬を赤らめて扉の傍に立っていた。 「おまえらなー、ここをどこだと思ってるんだ? 病院だぞ、病院!」 「…………」 「…………」  黒崎はトマトのように真っ赤になってうつむいてしまい、沢井はばつの悪い表情を浮かべるしかできなかった。 「心配して様子を見に来たら、なんだよ。イチャイチャとちゅーなんかしちゃって。だいたい入ってきたのがオレじゃなかったら、どうするつもりだったんだよ? まったく」  川上は腕を組んでブツブツ文句を言っている。 「悪い」  沢井はそれしか言えない。 「黒崎も、もう大丈夫そうだな。それにしても駅の階段から落ちるなんて、軽傷で済んで良かったものの、おまえらしくない不注意だな。気をつけろよ。沢井が心配のあまり死にそうだったんだからな」 「はい。すいません……」  見事なもので黒崎はもう、ポーカーフェイスを取り戻していた。……内心では、まだかなり狼狽えていることは沢井にだけは分かったが。 「……じゃオレ、スタッフステーションに戻るけど、もう病室でちゅーはするなよ。あ、勿論エッチもするなよ!」  川上は最後に強く釘を刺してから出て行った。  再び二人きりになった病室で、黒崎が聞いてきた。 「和浩さん、そんなに心配してくれたんだ……?」  沢井は黒崎を横にならせながら、少し叱るような口調になって答えた。 「当たり前だろ。さっきも言ったけど、本当に生きた心地がしなかったんだからな」 「ごめんね……」 「……もういいから、少し眠れ。手を握っていてやるから……」 「うん。和浩さん」  黒崎は目を閉じると、すぐに穏やかな寝息を立て始めた。  

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