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第36話 真相がわかるとき②

 病室の中には鈴本がいて、沢井の姿を見ると小さく舌打ちをした。  沢井は鈴本に近寄ると胸ぐらをつかんで問い詰めた。 「おまえ、雅文になにをした!?」  鋭い目で睨みつけると、鈴本は不敵な笑みを寄越した。  沢井はすべてが分かった気がした。……雅文が急に強い不安を訴え出したのは、こいつのせいだ。 「和浩さ……ん……」  そのとき、黒崎の弱々しい声が沢井を呼んだ。  沢井は鈴本の胸ぐらをつかんでいた手を乱暴に離すと、力任せに床へ突き飛ばした。  そしてベッドでぐったりと横たわっている黒崎の体を抱き起こす。  黒崎はきつく目を閉じ、形のいい眉を苦しげにひそめている。 「雅文っ……! 雅文っ……」  頬にそっと触れ、名前を呼び続けていると、黒崎はゆっくりと目を開けた。  黒崎は沢井を見ると、大きな瞳に薄っすらと涙をたたえ、安堵の微笑みを浮かべた。 「和浩さん……、良かった……。オレの傍にいてくれたんだ……」  沢井は彼の華奢な体を力いっぱい抱きしめた。それから鈴本のほうへ振り返る。 「おまえが、雅文を不安に陥れてたんだな……!?」  鈴本は歪んだ笑い顔を見せた。 「ああ、そうだよ。黒崎さんにはあんたみたいなバツイチの子持ちなんかより、オレのほうがふさわしいからな! 正しい選択をするようにオレがちょっと手助けをしただけさ。催眠暗示を使ってね!」 「……っ……」  沢井の怒りが沸点を越えた。 「……和浩さん……、ダメだよ……」  怒りのあまり我を忘れ、鈴本を殴り飛ばそうとした沢井を止めたのは、二人のやり取りを聞いていた黒崎だった。
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