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第38話 スイートルーム
「ごちそうさま。すごくおいしかった。ありがとう。和浩さん」
会計を済ませて出てきた沢井に、黒崎はペコリと頭を下げる。
沢井は照れたように微笑み、黒崎の頭をポンポンとしてくれた。
レストランがある最上階のフロアからエレベーターに乗ると、沢井はエントランスのある一階ではなく、途中のフロアのボタンを押した。
「あれ? 和浩さん、なんで?」
黒崎が不思議に思い問いかけると、
「今夜、このホテルに部屋をとってあるんだ」
沢井から思ってもいなかった答が返ってきた。
「えっ?」
びっくりする黒崎に、
「こういうところに泊まるのも楽しそうだろ?」
沢井はそう言って、いたずらっぽく笑った。
「うわー、すごい! 豪華」
部屋はなんとスイートルームだった。
落ち着きのある上品な装飾、シンプルだが高価そうな調度品、二人で使うには勿体ないくらい広々とした空間、どれもが最高級のランクだ。
ソファセットのテーブルの上には瑞々しいウェルカムフルーツが置いてある。
窓からは都会の街並みを一望でき、夜景がまるで夜空に輝く星々のように見える。
「うわー、きれいー」
黒崎がいつものポーカーフェイスを完全に忘れ、子供みたいにはしゃいでいると、沢井が後ろから抱きしめてきた。
「気に入った? 雅文」
「うん! ……でも和浩さん、この部屋の宿泊料って、すごく高そうなんだけど……」
「まあ、それなりにな」
「……大丈夫?」
ついお会計の心配をしてしまう黒崎に、沢井は苦笑する。
「オレたちは普段、無駄遣いとかしないんだから、これくらい平気だよ」
「そうだけど……んっ……」
黒崎の言葉は、沢井のキスによって封じられた。
舌を絡め、お互いを貪り合う激しいディープキスを存分に楽しむ。
黒崎は沢井のキスに感じまくってしまい、腰が立たなくなってしまった。
そんな黒崎を沢井はお姫様抱きにして、ソファまで運んでくれた。
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