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第39話 結婚
黒崎がソファで腰砕け状態でいると、沢井が冷蔵庫から出してきたのだろうワインのボトルを持って隣に座った。
「飲むだろ? 雅文」
「え? あ、シャンパン? ……だからさっきのディナーのとき、ワイン頼まなかったんだね。変だなって思ってたんだ」
いつも外食するとき、居酒屋などの場合は黒崎はビールくらいしか飲まないが、沢井は日本酒からウイスキーまで何でも来いで、レストランのコース料理の場合はワインを頼み、二人で飲む。だが今夜は彼はワインを頼まなかったので、不思議に思っていたのだ。
「部屋へ着くまでに、おまえが酔っ払っちゃったら、困るからな」
そう言って沢井は器用にシャンパンの栓を抜き、二つのグラスに注ぎいれた。
シャンパンの入ったグラスが部屋の照明を受け、キラキラ輝くのがとても綺麗だ。
黒崎がシャンパンに見入っていると、
「雅文」
名前を呼ばれた。
「なに?」
黒崎が顔を上げると、沢井の切れ長の瞳にぶつかった。沢井は真っ直ぐに黒崎の瞳を見つめて、その言葉を言った。
「オレと結婚して欲しい」
「――――」
突然の告白に、黒崎は一瞬思考停止になった。
「結婚……」
おうむ返しに呟く。
「ああ。オレたちはもう一緒に暮らしてるし、オレはおまえと一生添い遂げるって決めている。だから今更っていう感じもあるんだけど。……鈴本のこともあったし、きちんと言っておきたかったんだ」
「和浩さん……」
沢井に言われた言葉がじわじわと黒崎の心に染みわたって来て、心の底から幸福感が込み上げる。
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