40 / 69

第40話 マリッジリング

 幸せが涙となって黒崎の瞳にあふれた。 「オレと結婚してくれるか? 雅文……」 「はい……和浩さん……。はい……」 「良かった……。断られたらどうしようかと、ちょっとだけ不安だったんだよ……オレ」  沢井が安堵したように微笑むのを見て、黒崎は彼を優しく睨んだ。 「断るなんて……そんなことあるわけないでしょ」 「まあ、そうなんだけどさ。……緊張した」 「和浩さんっ……」  黒崎は沢井に抱きついた。  黒崎の体を受け止めながら、沢井は更に言葉を重ねた。 「それとな、オレはもう二人の関係を隠すのはやめようって思ってる」 「えっ……?」  今夜は、沢井に驚かされてばかりだ。 「勿論、だれかれ構わず言って回るってわけじゃなくて、自然にしようってね。それでオレたちの関係が分かったなら、それはそれでいいかなって」 「和浩さん……」 「ただ、松田(まつだ)部長にはきちんと話しておこうと思ってる。それから田渕先生にも話しとかなきゃな。いつまでも三月のこと言われ続けたらたまらないから」 「……ありがとう。和浩さん」  涙声で言うと、沢井は黒崎の髪を撫でてくれた。  沢井はしばらくそうして黒崎の髪を撫でてから、優しい声で囁いた。 「雅文、左手、出して」 「え?」  沢井は黒崎の左手を取ると、薬指にそっとそれをはめてくれた。 「和浩さん、これ……」 「結婚指輪。……良かった。ピッタリだな、サイズ」 「和浩さっ…………」  黒崎は涙が止まらず、言葉に詰まってしまった。

ともだちにシェアしよう!