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第40話 マリッジリング
幸せが涙となって黒崎の瞳にあふれた。
「オレと結婚してくれるか? 雅文……」
「はい……和浩さん……。はい……」
「良かった……。断られたらどうしようかと、ちょっとだけ不安だったんだよ……オレ」
沢井が安堵したように微笑むのを見て、黒崎は彼を優しく睨んだ。
「断るなんて……そんなことあるわけないでしょ」
「まあ、そうなんだけどさ。……緊張した」
「和浩さんっ……」
黒崎は沢井に抱きついた。
黒崎の体を受け止めながら、沢井は更に言葉を重ねた。
「それとな、オレはもう二人の関係を隠すのはやめようって思ってる」
「えっ……?」
今夜は、沢井に驚かされてばかりだ。
「勿論、だれかれ構わず言って回るってわけじゃなくて、自然にしようってね。それでオレたちの関係が分かったなら、それはそれでいいかなって」
「和浩さん……」
「ただ、松田 部長にはきちんと話しておこうと思ってる。それから田渕先生にも話しとかなきゃな。いつまでも三月のこと言われ続けたらたまらないから」
「……ありがとう。和浩さん」
涙声で言うと、沢井は黒崎の髪を撫でてくれた。
沢井はしばらくそうして黒崎の髪を撫でてから、優しい声で囁いた。
「雅文、左手、出して」
「え?」
沢井は黒崎の左手を取ると、薬指にそっとそれをはめてくれた。
「和浩さん、これ……」
「結婚指輪。……良かった。ピッタリだな、サイズ」
「和浩さっ…………」
黒崎は涙が止まらず、言葉に詰まってしまった。
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