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第41話 マリッジリング②
涙に濡れる目元に、沢井が優しくキスをしてくれる。
「オレの指には、おまえがはめてくれるか?」
沢井はそう言うと黒崎の指輪とお揃いの指輪を、右手に乗せてきた。
黒崎は自分の薬指の指輪と渡された指輪の両方に、そっと口づけしてから、沢井の左手の薬指にそれをはめた。
「ありがとう、雅文……」
「……オレのほうこそ……ありがとう……」
涙で途切れる声で黒崎は言った。
「ほら、泣いてないで、乾杯しよう」
「……ん……」
「おまえに永遠の愛を誓うよ、雅文。乾杯」
「乾杯……。オレは永遠に和浩さんのものだよ……」
二人はグラスのシャンパンを飲み干した。
「……指輪、病院にはしていけないね」
黒崎は指輪を優しく撫でながら、呟く。
「そうだな。外科医はオペがしょっちゅう入るからな。……オレとしてはおまえとお揃いの指輪をしているところを、みんなに見せつけてやりたいけどな」
沢井が黒崎の肩を抱き寄せる。
「えー、やだよ。川上先生とかがすごくからかってきそうで」
「オレたちに当てられて、川上も彼女との結婚を決めそうだから、あいつの彼女に感謝されそうだ」
「川上先生はまだ結婚しないのかな?」
「さあなー、あいつは結構そういうところのんびりしてるからな」
シャンパンを少しずつ飲みながら、愛する人と他愛のない話をするのがとても楽しい。
「……オレ、自分が結婚するとは思っても見なかった」
黒崎が言うと、沢井は二杯目のシャンパンを飲み干して笑った。
「相手、男だし?」
沢井の言葉に黒崎は小さく笑った。
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