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第47話 カミングアウトは難しい

 次の日、沢井は体力を取り戻していたが、黒崎はまだヘロヘロ状態だった。  それでも出勤し、白衣に腕を通すと、重怠い腰もなんとかシャキッと伸びてくれた。  夕方の外来が終わり、夜勤が始まるまでのわずかな時間に、黒崎は一人、休憩室でコンビニで買ったおにぎりを食べる。  ……昨日とはずいぶん違う夕食だよな……。  ぼんやりと考えていると、脳外科医の田渕がやって来た。どうやら彼も夜勤のようで、片手にお弁当を持っている。  田渕は黒崎の姿を見つけると、向かいの席に座った。  初めは、「もう怪我は大丈夫なのか」と、黒崎の心配をしていたが、やがて、少し声をひそめると、沢井と三月の話をしてきた。 「なあ、黒崎、あれから沢井と、三月のことについてなにか話をしたか?」 「え? あ……はあ、まあ……」  黒崎が曖昧に返事をすると、 「で、どうなんだ? 沢井の反応は?」  田渕は身を乗り出すようにして聞いてきた。 「はい……、あの、それが、沢井先生には、他に……付き合っている人がいるみたいで……」 「えっ……」  田渕は絶句してしまった。  しばし、そのままフリーズしてから、がっくり肩を落として力なく呟いた。 「なんだ……、そうだったのか。そうだよなあ……、沢井ほどのイイ男、付き合っている女性がいてもおかしくないか……。じゃあ、三月との復縁はないかぁ……」  ひどくしょんぼりしている田渕を見ていると、沢井の相手が男の自分であるなどとは、とてもじゃないが言えない黒崎だった……。

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