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第58話 新婚旅行⑤

「布団で寝るなんて、すごい久しぶりだよ」  沢井が言うと、 「オレは小学校の頃の修学旅行以来」  腕の中の黒崎がそう応えた。  くっつけた布団の上を転がって、沢井が黒崎に伸し掛かる体勢になる。  二人はしばらくのあいだ見つめ合い、新婚旅行の初夜という幸せを共有したあと、口づけを交わした。  息があがってしまうような激しいキスをしてから、沢井は再び黒崎を見つめ、小さく笑った。 「……なに? 和浩さん」 「いや。うちでもパジャマをやめて、浴衣にしようか?」 「えっ……?」 「だって、浴衣がうまく着れなくて、帯にこんがらがる雅文がかわいいし」 「いっ、いくらなんでも、そのうちきちんと着れるようになるよ」  黒崎が赤くなって抗議すると、沢井は今度は含み笑いをした。 「それにさ、今のおまえみたいにちょっと、はだけたときが超色っぽいし、帯とくだけで前が全開になるのもそそられるよな……」 「和浩さんっ」  黒崎は更に真っ赤になり、慌てて自分の浴衣の乱れを直す。 「でもなー、オレのパジャマの上だけを着る雅文にも萌えるし、ボタンを一つずつ外していくのもいいし、乱暴に引き裂くっていうのもそそられるし。……浴衣もパジャマもどっちもいいな」 「……和浩さん、職場ではあんなにクールでかっこいいのに、二人きりになると、ちょっとイメージ変わるよね……」  黒崎はこれ以上はないくらいに真っ赤になって、上目づかいに沢井を睨んだ。

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