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第59話 新婚旅行⑥

「おいおい、それはオレのセリフだろ。雅文のほうこそ、職場ではいつもポーカーフェイスで、無愛想なくせに、オレと二人きりのときはこんなに天使ちゃんなんだからな」  沢井はそう言うと黒崎の額へチュッとキスをした。  そして手早く黒崎の帯をといてしまうと、浴衣の前を全開にした。  黒崎が恥ずかしがって小さく抵抗してくるのを封じ込め、下着も取り去ってしまうと、沢井は彼のなめらかな肌の感触を楽しむように両手を這わせていく。  黒崎の肌はとても綺麗だ。  まるで手に吸い付いてくるかのようで、こうして触れているだけでも、沢井の欲望のボルテージはどんどん上がっていってしまう。  この肌に自分の所有の印を刻み、この天使を声が掠れるまで善がり泣かせてみたい。  黒崎と出会うまでは知らなかった沢井の中の激しさ。  本気で人を愛するということ。 「雅文……」  喉元に唇を這わせると、黒崎が甘い声を零した。 「あっ……、和浩さんっ……」  初めての旅行先での、二人きりの夜、いつもとは違う和室と布団の上での行為。  そんなシチュエーションが、ただでさえ感じやすい黒崎をより敏感にさせて、少しの刺激だけで、過剰なほどの善がり声が零れ落ちる。  そのことが恥ずかしくたまらないのか、黒崎が自分の指を噛んで声を殺そうとしている。 「こら、だめだろ。おまえの手は大切な外科医の手なんだから……」  沢井は彼の手を口元から離すと、そっと口づけてから布団へ押さえつけた。 「オレはおまえの声が聞きたいよ……、聞かせてくれ、雅文……」

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