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第62話 新婚旅行・二日目②
沢井と黒崎は旅館へ帰ると、一日目と同じように露天風呂に入った。
自分で着れると言い張り、浴衣と闘って敗れ、帯がこんがらがった黒崎の姿に、沢井は笑いをこらえるのが大変だった。
結局、沢井がまた浴衣を着せてやり、夕食の膳を美味しくいただき、その夜も体を重ねた。
行為のあと、沢井の胸に小さな頭をもたせかけていた黒崎がポツンと呟いた。
「明日にはもう帰らなきゃいけないんだね……。寂しいな、なんだか」
沢井は彼の柔らかな髪を撫でながら、耳元へ囁いた。
「また休みをとって旅行すればいいさ」
「いくらなんでもそんなに休み、とれないでしょ」
「川上の分の休みをぶんどって、オレたちの休みにあてよう」
「ひどい……、川上先生が聞いたら怒るよ?」
「冗談は置いといて、本当にまた旅行しような。オレもっと色々なところへ雅文と一緒に行きたいよ」
沢井がそう言うと、黒崎はクスッと小さく笑みを漏らした。
「オレたち、せっかちだよね。まだ旅行中だっていうのに、もう次の旅行のこと考えてるなんて」
沢井も同じように微笑んだ。
「確かに、まだ明日も半日残っているもんな。でも多分、土産買うのでつぶれるぞ」
明後日は二人とも朝から仕事が入っているので、明日は少し早めの飛行機で帰るのだ。
「今夜は眠りたくないな……」
「…………」
「和浩さん? どうしたの?」
急に黙り込んでしまった沢井に、黒崎がきょとんと訊ねてくる。
「……雅文、その言葉は誘ってるように聞こえるぞ?」
「えっ……? そ、そんな意味で言ったんじゃなくって……、ただ……」
恥ずかしさにあたふたとする黒崎の唇を、沢井の唇が塞ぐ。
しっとりと口づけを交わし、二人は今一度、愛の行為へとのめり込んで行った……。
――激しい愛の交わりのあと、心地良い眠りへと落ちていきながら、黒崎は二日間のことを思い出していた。
買ってもらったホワイトタイガーのぬいぐるみ、ジェットコースター、観覧車から見た夕日とキス、露天風呂……、うまく着れない浴衣、美味しい食事……、布団の上での……。……水族館、手を繋いで歩いた砂浜……、それから……。
眠気が徐々に思考を曖昧にしていく。
旅行楽しかった……。でも、でもね……、和浩さんと二人でいれるなら……きっと旅行へ行けなくったって……幸せ……。
マンションの中に閉じこもりっぱなしでも、楽しくて幸せだと思う……。
ね……和浩さん、愛してる……。
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