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第67話 純白の天使②

「……これ……」  黒崎は絶句し、 「川上の奴……」  沢井は川上のニヤニヤ笑いの理由を知った。  箱の中から出てきたのは、フリルがたっぷりとついた純白のエプロンだった。  ご丁寧に『ハッピー・ウエディング』と書かれたカードまで入っている。 「……これ、誰がつけるの?」  黒崎が困惑しきった表情で呟く。 「誰って、そりゃ……」  沢井はその乙女チックなエプロンを広げると、黒崎の体に当ててみた。  うわ。すげー、似合う。マジ天使だよ……。  沢井は感動した。  だが、黒崎のほうは困惑しきっているというか、ひたすら恥ずかしがっているというか……とにかくフリルのついたエプロンを敬遠するような目で見ている。  しかし、沢井としては何としても彼にこのエプロンをつけて欲しい。 「なー、雅文、このエプロンつけてみてくれないか?」 「えっ!?」 「頼む」  沢井は両手を合わせて拝むようにしてお願いした。  だが、黒崎は大きくかぶりを振る。 「や、やだよ。こんなヒラヒラしたの。オレはいつものエプロンのほうがいい」  そう言って、ダイニングテーブルの椅子にかけられた青いシンプルなエプロンへ視線を投じた。  ……まあ、確かに雅文はあのエプロンでも充分かわいい。かわいいけれども、せっかくフリルの純白のエプロンがあるのだ、ぜひともつけて欲しい。

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