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案件1-3

「いや…何て言うか、最初は寝泊まりするには設備が貧弱だねって話してて」 「前提が可笑しいんだ、先ず寝泊まり前提な事に疑問を持とう。自分をおうちに帰してあげよう」 「でも、俺ディズニーランドが出来たら帰りたくねえよ…」 「本末転倒だよ間宮くん、そもそも何言ってるか良く分かんないし」 発言の重みが全部ウエハースレベルになるから、その頭のネクタイを取ってくれないだろうか。 「大体君たち、ディズニーに行けないから夢見てるだけでしょ」 「行ったわ!アフター6パスで会社帰りに行ったわ!」 「しかもスーツで行ったからスタッフと間違われて延々写真頼まれたわ」 「社畜あるある悲し過ぎる」 一回全員帰って寝たら?と方眼紙を破りたくなった。ホワイトボードも全部消したかったけど、隅のワニの絵が可愛かったので止めた。 食堂案は魅力的だが、このまま会議を続けてマトモな新生RICが爆誕するとも思い難い。取り敢えずどうにか解散してくれないか頼もうとした矢先、天の助けがメインルームのゲートを開けて膠着した空気をかち割った。 「あっ」 「ふっ…副社長…?」 「副社長…!副社長お久しぶりです…!」 「久しぶりー、ごめんな暫く会社空け……何で頭にネクタイ巻いてんの?」 メシア。RICの良心。人を駄目にする椅子。同担拒否ガチ恋量産機。 背後へ大量の二つ名を抱えながら、RICのNo.2が堂々の帰還を果たす。彼の出現で周囲の社畜らが一斉に湧き立ち、萱島は助かったとばかりに今年一番悲鳴を上げた胃を押さえた。 そして当の本郷は盛大な歓迎に「よせやい」と照れ、「何でネクタイ巻いてんの?」と再度問い、机の方眼紙を確認し、最後にホワイトボードを見て首を傾げてしまう。 1人冷静な戸和くんが事の顛末を説明すると、彼は合点が行った顔でバナナワニ園に向かって頷いていた。 「やっぱ素人の設計じゃ駄目だな…簡単なリフォームくらいしかしてないし、建て替えても良いかもな」 「そうですよねえ、ほんと社長って趣味悪いんだから」 「いや、設計したのは俺なんだ」 second 徹夜組ボーイズトーク3参照。 古い記憶を遡らせた職員らは固まり、考え、真顔になる。 そして暫し互いを睨んで意思疎通を図ったかと思えば、急に憑き物が落ちた顔でふっと柔らかく微笑んでいた。 「ほんとセンス最高、正にジャスティス。俺は何時だって誰より愛してますよ、今の本部をね」 「ディズニーなんて馬鹿な事言っちまったぜ、この壁にはもっと大事な愛情が沢山詰まってたのに。神様、愚か者の俺を許してくれよな」 「何なの君たち、本郷さんを否定したら死ぬ病にでも罹ってんの?」 「え、バナナワニ園作んないの?」 副社長がズレたコメントをしている間にも戸和くんは電卓を弾き、何やら計算式を繋げている。 暫くして彼が「概算10億くらいですね」と告げれば、隣の副社長は「その位ならマジで考えるよな」と火に油を注ぐレスを寄越した。 おわり

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