28 / 321

【第5話】中世ヨーロッパの男娼館での営みを妄想シテみる(1)

 イチャイチャ。  という表現がやはり相応しいか。 「有夏の唇、やわらかい……」  互いの口の中をかき回し、唾液を交換し呑み込む。  舌を舐めて絡めて。  最後は唇を軽く合わせて終わる、いつものくちづけ。  日に何度か行われるその行為だが、今は夕食の支度まで少し時間があるからか、幾ヶ瀬のキスは執拗だった。  何度も音をさせて唇を犯しながら、Tシャツの上から有夏の身体を撫でまわす。 「んん……」  有夏が僅かに身を引いた。 「なに、幾ヶ瀬。するの? いま?」 「え、しないの?」  その気がなかったとしても、思わず欲情してしまうキスだったのに。 「ん…別にいいんだけど。何かねぇ…何かねぇ……?」  有夏、浮かぬ顔だ。  幾ヶ瀬は眉をひそめた。 「嫌ならしないよ? どうかしたの、有夏?」 「んー……特にイヤでもないけど。別にどっちでもいんだけど?」  どうにも煮え切らない返事だ。 「なんていうか、幾ヶ瀬が……」 「なに? 俺が何かした? キスしたのが嫌だった?」  戸惑いの思いからか、語尾が掠れた。 「ぅうーん……」  そんな幾ヶ瀬をチラリと見やって、有夏。肩を竦める。 「だって幾ヶ瀬、有夏に当たり前みたいに…セッ、セッ……するし。ちっとも有り難がってないし。何かこう…何かねぇ……」  セックスとはっきり言えないらしい。  それなのにセックスのマンネリ化に不満を抱いているらしい。

ともだちにシェアしよう!