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【第7話】カラフル(13)
そのまま花火が終わるまで1時間程あったろうか。
有夏はバルコニーを離れなかった。
最後にパーティとばかりに何発も同時に打ち上げて、夜空は華やかに染まる。
その色が静かに闇の中に落ちていっても、彼はしばらくそこを動かない。
黒い空に光を探すかのように、じっと佇んでいる。
やがて、暗かったビルの窓にひとつひとつ白い明かりが灯りはじめた。
よろよろと部屋に戻り、しかし窓を閉める気にはならない。
夏の夜には珍しく、心地良い風が入ってくる。
花火の残り香をそこに見付けて、有夏は窓辺に座りこんだ。
灯かりをつけて、夕食をとって、それからゲームの続きをしよう──そう思うのに、電気をつける気にもならない。
腹のあたりがスウッと冷えるのを感じる。
幾ヶ瀬は今頃何をしているのだろうかと考えた時、有夏は思い至った。
何か大事なことを忘れている気がすると。
「何だっけ……」
昨日の夜から幾ヶ瀬がしつこく何事かを言っていたような。
彼の言うことは大概聞き流すクセがついているので、いつものように生返事をしたと思う。
「まぁいっか」
風が心地良い。
薄闇に包まれ、1人のベッドで有夏は目を閉じる。
静かに地面に引き込まれる感覚。
寝るならベッドに行かなきゃ。
それよりお腹がすいてきた……そんな思いもすぐに眠りの中へ消えてしまう。
幾ヶ瀬が帰ってくるのは明日だ。
顔を見たらこう言ってやろうか。
──有夏も幾ヶ瀬のことが好きだよ、と。
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