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【第8話】ヘンタイメガネの変態たる所以(6)

「うぅ……」  仕方ない。  自首する凶悪犯の気持ちでアタシはドアを開けた。  すみませんでした、と言いかけた時だ。  ヘンタイメガネがアタシを押し退けて部屋の中へ侵入したのだ。  止める間もない。  無言で狭い部屋を見回し、キッチンスペースを確認し、お風呂とトイレまで見やがった。 「ちょっと、何するんですか。乙女の部屋を」 「誰が乙女……クソビッチが! ああ……すみませんね。まさかと思ったけど、一応確認したかっただけなんで。居ませんでした、はい」  今小っさい声でクソビッチって言ったな。 「誰か探してるんですかぁ? 同居してる胡桃沢さんのことですかぁ?」 「同居じゃない。同棲だ!」  一応気ぃ遣って「同居」って言ってやったのに、真っ向から言い切りやがった。  アタシは知ってるぞ?  正しくは同居でも同棲でもねぇぞ?  有夏チャンの部屋は別にあるんだから。  幾ヶ瀬による強制掃除が完了すると有夏チャン、自分の部屋に戻るじゃないか。  すぐに散らかしてゴミ屋敷に戻ってしまうんだが。  ……悲しいかな、有夏チャン。  こう書くと、まるで本当にダメ人間みたいだ。 「胡桃沢さん、出て行っちゃったんですかぁ。さっきケンカみたいな大きな声が聞こえてましたもんねぇ」  おっとヤバイかな。怒らせちまうかな。  ノゾキがバレたわけじゃないとホッとしたアタシ、ちょっと大胆に出てみた。 「珍しいですね。胡桃沢さんが怒るなんて。いつも穏やかにお菓子食べて……」  あ、ヤバイと気付いた。  ヘンタイメガネが試合前のボクサーみたいに「フシューッ」と息を吐いたからだ。 「期限切れの菓子で有夏を餌付けしようったって、そうはいかないからな。この雌豚が」 「ヒィ。ごめんなさい……」  何てことだ、面と向かってメスブタ呼ばわりされた!

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