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【第11話】そうだったのか、胡桃沢家(8)

「幾ヶ瀬、しよ」 「有夏……俺、明日は早番だから! ディナーの仕込み終わったら帰れるから。それから一緒に大掃除しよ? ね? だから今日は……はぁんっ!」  布越しにモノを押さえられ、幾ヶ瀬はたまらず悲鳴をあげる。 「幾ヶ瀬の仕込みはもうできてる」 「そ、そういうこと言うんだ、有夏!?」  まさかの下ネタに、観念した様子。  しょせんは無駄な葛藤から解放された幾ヶ瀬は、両手で有夏の背を支えると、そのままベッドに押し倒した。  してやったりという表情で、有夏も彼の腰に腕を回す。 「きもちい。幾ヶ瀬に乗っかられるの。重くて、動けなくて……」 「有夏ってさ……」 「んぁ?」 「前から思ってたけど、ベッドじゃ甘えただよね?」 「なにがぁ?」 「気付いてないならいいけど」  すでにトロンと目を潤ませている有夏に、余計なことは言うまい。

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