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【第12話】有夏邸 脱・GM屋敷!(9)
おいおい、ロコツだなぁ。
アタシと2人きりにされちゃたまんないってか?
幾ヶ瀬の袖をチョンとつまんで出て行った。
これはちょっと傷つくなぁ。
ダンボールをまとめて縛り終えると、アタシはジリジリ玄関の方へ後退した。
言い訳がきくように手に緩衝材の入ったゴミ袋を持っておく。
足音を忍ばせて幾ヶ瀬の部屋の前まで行くと、そろりとドアを開けた。
3センチほどの隙間から中を覗く。
こういう時、狭い部屋は良い。
中の様子がほとんど余すことなく見えるんだからな。
クローゼットから荷造り用の紐を取り出したらしい幾ヶ瀬──残念ながらこの位置だけは玄関から死角になっていて見えないのだが。
未だ袖をつまむ有夏チャンに「はい」と紐を渡した様子。
そのままこっち側に戻ってきたので、アタシは慌ててドアを閉める。
見つかったわけじゃないとホッとしたのは、もう一度ソロリと隙間を開けた時、2人がキッチンスペースと廊下の際でしゃがみ込んで何かを探しているようだったから。
正確に言うと探しているのは幾ヶ瀬だけで、有夏チャンは奴の袖をつまんだままちょこんと座っているだけなのだが。
「ゴミ袋、もう少しあった方がいいよね。こないだ買ったばっかなのに勿体ないな」
クイクイと袖を引っ張られ、幾ヶ瀬は振り向く。
「どしたの、有夏?」
「明日、休めないんだ?」
でた。甘え声、出た!
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