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【第14話】有夏チャンのこっちのおクチはウソがつけない(1)

 今更であるが、プラザ中崎は1Kの物件である。  キッチンスペースを広くとってあるものの、居室はせいぜい8畳程度。  2階の端から2軒目の幾ヶ瀬家にも、こじんまりとした家具が置かれていた。  テーブルは1つ。長方形の座卓だ。比較的大きめサイズではあるか。  そこに、無数の料理が並んでいた。  シェフ(見習い)だからこその大皿が数枚──普通、ひとり暮らしの若者はこんな宴会用の大きな皿は持っていない。  更に小皿、鉢、椀がびっしりと。 「さぁ、食べて! 有夏、沢山食べて!!」 「は?」  「ただいま」と言う間もなく、有夏は部屋の入口で立ち尽くしていた。  「おこしやす」と書かれたTシャツに短パンという気楽な服装だ。財布も持っていないのが分かる。 「コンビニでヤンジャン立ち読みしてたんだけど……」  その間に、幾ヶ瀬がおかしくなってしまったと言外に戸惑いをにじませて。 「誰かの誕生日かなんかだっけ」 「誰かのって何? 違う違う! 誕生日でも記念日でもないよ。有夏と初めてキスした記念日は1週間後だって!」 「キモっ……」

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