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【第14話】有夏チャンのこっちのおクチはウソがつけない(9)
幾ヶ瀬の人差し指と中指が固くなった乳首をつまんだ。
力をいれたり弱めたり。
「ふぅっ……んっ」
咄嗟に茶碗をテーブルに戻した有夏。
このままでは確実にこぼしてしまうと、これは懸命な判断であったろう。
耳の穴にあたたかな息を吹き込まれ、彼は背中を強張らせた。
ともすれば解けそうになる身体を叱咤しているように見えて、幾ヶ瀬は喜悦の笑みを浮かべる。
「最終奥義の前に、色々準備があるからね」
「言いかたっ!」
乳首を集中的にいたぶられながら、有夏は尚も眉間に皺を寄せている。
快楽に溺れるには、どうしてもこれまでの流れが腑に落ちないらしい。
今の今まで食べろ食べろとわめいていた男が、この変貌っぷり。
「幾ヶ瀬っ、冷蔵庫こわれたショックで……自分が何やってるか分かってねぇだろっ」
「分かってるよ?」
同時に左の乳首が解放され、有夏はため息をついた。
そんな彼の耳元に幾ヶ瀬が囁く。
「有夏が左の乳首と右の乳首、どっちが気持ちよくなるか実験をしようかと」
「はぁ? お前、酔ってんのか……うぅんっ」
今度は右側をつままれた。
指で挟み、捏ねりあげるようにして刺激する。
「酔ってないよ? 料理人は呑まない方がいいんだ。舌と鼻を壊しかねないんだって」
「別のとこが……っ、壊れてんじゃねぇの」
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