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【第15話】記念日を一緒に過ごしたい派・気にしない派(6)

 ぼーっとしたままリンゴに手を伸ばすその姿に、幾ヶ瀬は再びため息をつく。 「本当に覚えてないんだ? 今日は2人の初チュー記念日だよ」 「は?」  有夏が横目で幾ヶ瀬をチラ見する。  その表情は強張っていた。 「え、なに? はつちゅ…………うっわ、キモいんだけど?」 「何で!? 大事な日じゃん!」 「いやいや、キモイキモイ。んなこと、いちいち覚えてんのかよ。キッモ!」  思いきり否定しながらも、幾ヶ瀬が作ったちりめんじゃこ入り玉子焼きを頬張っている。  心外であるという顔を作りながらも、幾ヶ瀬はマグカップに紅茶をなみなみと注いだ。 「俺、カードとか銀行の暗証番号もその日付にしてるけど?」 「へ、へぇ……推察されにくくていいんじゃねぇの?」

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